25 問いと推論の関係 (20200812)

[カテゴリー:問答推論主義へ向けて]

 問答推論主義にとって、もっとも基本となることは、このカテゴリーの始めに01と02で述べたように、<推論の前提から論理的に導出される命題は、複数あるが、現実に推論が成立するためには、その中から一つの命題が結論として選ばなければならない。その選択は、ある問いに対する答えを選ぶという仕方で行われている>ということである。この背景にあるのは、<推論は問いの答えを求めるプロセスである>という理解である。これに対しては、「推論の結論となりうる複数の命題から一つを選択する方法は、これ以外にはありえないのだろうか?」という疑問が生じるだろ(私の最終講義でも、森田邦久さんからそのような質問を受けた。そのときには、他の解決策が思いつかないというような不十分な返答しかできなかったのだが、以下では、もうすこしだけ説得力のある説明をしたい。)

 問いの答えを見つけるプロセスには、次の二通りがある。一つは、これまで念頭に説明してきたものであり、<ある問いに対する答えを見つけようとして、すでに知っている知識を前提として、そこから推論によって答えを求めようとする場合>である。もう一つは、これまで言及してこなかったものだが、<問いに対するある暫定的な答え、ないし答えの予想をえて、それを証明しようとして、それを結論とする推論を考える場合>である。この後者の場合には、推論の結論は最初にまだ不確実なものとして与えられており、それを証明するために前提を求め、推論によって当初の答えを証明しようとすることになる。このどちらにおいても、<推論は問いの答えを求めるプロセスである>といえるだろう。

 私たちが推論するのは、この二通りしかないのではないだろうか。いま私はこれ以外の場合を思いつかないのだが、そのことを論証する方法も思いつかないので、まだ不十分であるかもしれない。もしその他のケースを思いつく方がおられたら、教えて欲しい。

投稿者:

irieyukio

問答の哲学研究、ドイツ観念論研究、を専門にしています。 2019年3月に大阪大学を定年退職し、現在は名誉教授です。 香川県丸亀市生まれ、奈良市在住。

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